2025年 | プレスリリース?研究成果
漢字圏出身の外国人は、日本語が上級でも「やさしい日本語」理解の対応が遅れやすい-平仮名の読みの弱点を実証-
【本学研究者情報】
〇文学研究科言語学専攻分野
准教授 木山幸子
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 日本に暮らす漢字文化圏出身の外国人にとって、平仮名表記の和語は理解に遅れが生じることを初めて実証しました。
- 漢字圏出身の日本語学習者は漢字を手がかりに日本語を理解しているため、平仮名表記では意味理解が遅れるのに対し、和語でも漢字が含まれていれば理解しやすいことを、単語理解の反応時間を中国語と日本語で比較する実験によって明らかにしました。
- 防災情報や行政案内を外国人に迅速に正しく伝えるために文化庁?出入国在留管理庁で提唱する「やさしい日本語」の表記は、読み手の母語の文字に応じて調整する配慮が必要であることを示唆する成果です。
【概要】
災害など緊急の際に情報を外国人に迅速に伝達し安全を確保するために、外国人日本語学習者が迅速に単語を理解できる要因の解明が求められています。
東北大学大学院文学研究科の趙雪含大学院生、同木山幸子准教授、成蹊大学文学部の熊可欣准教授(研究当時:学際科学フロンティア研究所助教)は、中国人上級日本語学習者を対象とした実験を通じて、漢字圏出身者にとっては「漢字を減らす」方針が、むしろ迅速な理解の妨げとなることを例証しました。実験の結果、母語で漢字を使う中国人は、日本語を理解する際にも漢字に強く依存し、「ごみ」など平仮名で書かれた和語より「硬貨」など漢字で書かれた漢語の方が速く理解できました。和語でも「紙くず」など漢字が含まれていれば速く理解できました。本知見は、外国語の読解の効率性は、読み手の母語によって異なることを具体的に実証するもので、外国人向けの行政や教育等の案内でも、読み手の母語に応じて表記を調整する必要があることを示唆します。
本研究成果は、2025年10月23日に国際学術誌International Journal of Applied Linguisticsに掲載されました。
図1. L2日本語読解時におけるL1中国語の漢字知識の利用度を検証する研究
【論文情報】
タイトル:Overreliance on Orthographic Similarity in L2-Japanese Conceptual Processing by L1-Chinese Learners
著者: Xuehan Zhao, Kexin Xiong, Sachiko Kiyama
*責任著者:東北大学文学研究科言語学専攻分野 准教授 木山幸子
掲載誌:International Journal of Applied Linguistics
DOI:10.1111/ijal.70016
URL: https://doi.org/10.1111/ijal.70016
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学文学研究科
准教授 木山幸子
TEL: 022-795-5984
Email: skiyama*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学文学部?文学研究科総務企画係
TEL:022-795-6002/6003
Email: art-syom*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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