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ミトコンドリアが血液細胞の運命を決める -赤血球ができるのか、血小板ができるのかを 分ける仕組みをマウスで解明-

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科医科学分野 教授 本橋ほづみ
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • マウスを用いて、巨核球?赤芽球系前駆細胞(MEP)(注1が赤芽球(注2へ分化するには、高いミトコンドリア(注3活性が必要であることを見つけました。
  • MEPはミトコンドリアの含有量により二つの集団に分けることができ、ミトコンドリアが多いMEPから赤芽球が、ミトコンドリアの少ないMEPから巨核球が分化することがわかりました。
  • 本研究成果は、多血症(注4に対する新規治療法開発への応用や再生不良性貧血の病態理解に貢献すると期待されます。

【概要】

体内を流れる赤血球や白血球などの血液細胞は、骨髄にある「造血幹細胞」から生まれます。造血幹細胞はまず「造血前駆細胞」と呼ばれる中間的な細胞をつくり、これが分裂?増殖しながら、赤血球や白血球などそれぞれの役割を持つ細胞へと成熟します。細胞の中で酸素呼吸を担う「ミトコンドリア」は、エネルギーをつくる重要な存在ですが、造血前駆細胞の分化における役割は明らかではありませんでした。

東北大学大学院医学系研究科医化学分野の成恩圭学術研究員、村上昌平講師、本橋ほづみ教授らの研究グループは、ミトコンドリア機能が低下したマウスを作製し解析を行いました。その結果、MEPが赤芽球へ分化するには正常なミトコンドリア機能が不可欠であることを明らかにしました。さらに、ミトコンドリアを多く含むMEPは赤芽球に、ミトコンドリアが少ないMEPは巨核球に分化することを発見しました。この成果は、ミトコンドリアが細胞分化の方向性を決定づけるという新しい概念を示すものであり、血液細胞の分化メカニズムに新たな視点をもたらします。本研究は、多血症や再生不良性貧血などの血液疾患の理解と治療法開発の進展にもつながると期待されます。本研究成果は、2025年11月20日付で国際学術誌 Stem Cell Reports に掲載されました。

図1. 血液細胞の分化過程についての概略図。血液に含まれる赤血球や白血球、血小板、免疫細胞は、多分化能を有する造血幹細胞を起源として、分化方向が制限された造血前駆細胞へ分化し、さらに細胞運命が決まることによって、機能する細胞へと成熟する。/p>

【用語解説】

注1. 巨核球?赤芽球形前駆細胞(MEP):血液凝固に使われる血小板を産生する巨核球と、ヘムを使用して酸素を全身に運搬する赤血球の両者に分化することができる血液前駆細胞のこと。

注2. 赤芽球:赤血球のもとになる細胞で、巨核球?赤芽球前駆細胞から分化する。

注3. ミトコンドリア:酸素呼吸を司る細胞内小器官であるとともに、赤血球が酸素の運搬するために不可欠なヘムを合成する場でもある。

注4. 多血症:血液中で赤血球が異常に増えてしまう病気で、ひどくなると血液の流れに支障がでて、頭痛やめまいなどの症状が出る。

【論文情報】

タイトル:Mitochondria Regulate the Cell Fate Decisions of Megakaryocyte-Erythroid Progenitors
著者:成恩圭、*村上昌平、守田匡伸、井田智章、赤池孝章、*本橋ほづみ
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科医化学分野 講師 村上昌平
東北大学大学院医学系研究科医化学分野 教授 本橋ほづみ
掲載誌:Stem Cell Reports
DOI:10.1016/j.stemcr.2025.102720

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科医化学分野
講師 村上昌平
TEL:022-717-8088
Email: shohei.murakami.a6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

教授 本橋ほづみ
TEL:022-717-8084
Email: hozumi.motohashi.a7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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