2025年 | プレスリリース?研究成果
ダイナミックレンジ120dBと光量適応信号選択機能を有する3次元積層型CMOSイメージセンサを開発 ―機械の「目」の高性能化?低消費電力化に貢献―
【本学研究者情報】
〇未来科学技術共同研究センター 教授 黒田理人
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 2段LOFIC(注1)を採用した画素単位の三次元積層型CMOSイメージセンサにおいて、ダイナミックレンジ(注2)120dBを実現しました。
- 光量に応じた適切な信号のみを選択的に読み出す光量適応信号選択機能を実現し、ダイナミックレンジと読みだし信号数のトレードオフ解消を実証しました。
- 開発した3次元積層CMOSイメージセンサは前例のない単位面積当たりの飽和電子数(276.8 ke-/μm2)を達成しました。
【概要】
CMOSイメージセンサは車載やマシンビジョン分野のセンシング用途において、機械の「目」としての役割を持ち、さらなる高性能化への要求は高まり続けています。
東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の瀧澤康平大学院生と未来科学技術共同研究センター?大学院工学研究科の黒田理人教授らの研究チームは、露光期間中にフォトダイオード(PD)から溢れた光電荷を蓄積する横型オーバーフロー蓄積容量(LOFIC)を、画素毎に2段設けてダイナミックレンジを拡大するとともに、光量に応じて適切な信号を読み出す光量適応信号選択機能を実現しました。さらにイメージセンサチップに3次元積層技術を適用し、前例のない単位面積当たりの飽和電子数(276.8 ke-/μm2)を達成しました。飽和電子数は広ダイナミックレンジ化や高い信号対雑音比(SNR)に結びつく指標であり、これらの技術を用いてダイナミックレンジ120dBのCMOSイメージセンサを開発しました。
本成果はCMOSイメージセンサの高性能化および、小型化や低消費電力化へ寄与することが期待されます。
開発技術の詳細は米国サンフランシスコで開催された国際会議 International Electron Devices Meeting(IEDM2025) において、2025年12月10日に発表されました。
図1.開発したCMOSイメージセンサのチップ写真と画素断面図
【用語解説】
注1. LOFIC:横型オーバーフロー蓄積容量のこと。高照度時などイメージセンサに入射する光量が大きい場合には、光電変換で発生する電荷数が多くなりPDに蓄積し切れずにオーバーフローして捨てらる。このオーバーフロー電荷を大きな画素内容量に蓄積して信号電荷として使用することで、より広いダイナミックレンジが実現できる。
注2. ダイナミックレンジ:イメージセンサで検出できる最も明るい光と最も暗い光の範囲を指す。明暗差が大きい被写体を撮影する際は、ダイナミックレンジが広いほど白飛びや黒つぶれを防ぐことができる。
【論文情報】
タイトル:A 120 dB Dynamic Range 3D Stacked 2-Stage LOFIC CMOS Image Sensor with Illuminance-Adaptive Signal Selection Function
著者:Kohei Takizawa, Yoshihito Hirai, Masaya Yoshida, Takezo Mawaki, Ken Miyauchi, Rihito Kuroda*
*責任著者:東北大学 未来科学技術共同研究センター 教授 黒田理人
国際会議:71st Annual IEEE International Electron Devices Meeting (IEDM 2025)
URL:https://iedm25.mapyourshow.com/8_0/sessions/session-details.cfm?ScheduleID=330&
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 未来科学技術共同研究センター
教授 黒田 理人
TEL: 022-795-3977
Email: rihito.kuroda.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学未来科学技術共同研究センター 広報
TEL: 022-795-4004
Email: niche-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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