2026年 | プレスリリース?研究成果
DNAの二重らせんを自在につなぐ新技術を開発―チオグアノシンの新たな光反応性を解明、DNAナノ構造体や核酸医薬への応用に期待―
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 准教授 鬼塚和光、 教授 永次史
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- DNA二重鎖の向かい合う鎖を、チオグアノシン(TG)(注1)を用いて高効率に架橋(結合)させる新しい技術を開発しました。
- チオグアノシンの新たな光反応特性を発見しました。従来一般的とされたものとは異なる反応機構で架橋が進行することを解明しました。
- 架橋されたDNAは高い熱安定性を持ちながら、細胞内の還元環境(注2)では元の状態に戻る「可逆性」を有しており、薬物送達システム(DDS)(注3)やDNAナノテクノロジー(注4)への応用が期待されます。
【概要】
生命の設計図であるDNAを、ナノマシンや薬剤の運び手として利用する研究が注目されています。
東北大学 多元物質科学研究所の鬼塚和光 准教授、永次史 教授、同大学院理学研究科のジャミラ?アッバス?オスマン 大学院生らの研究グループは、チオグアノシンをDNA二重鎖内の特定の位置に導入することで、光や化学酸化剤によってDNA鎖間を自在に架橋する新技術を開発しました。本架橋反応はDNA二重鎖の構造を歪ませずに素早く鎖間を結合させます。さらに、本研究では、DNA内部で電子が移動するチオグアノシンの新たな光反応特性を突き止めました。チオグアノシン同士の架橋は細胞内の環境で外れる可逆性を持つため、体内で薬を放出する核酸医薬や、DNAナノマシンの開発など、次世代医療への応用が期待されます。
本研究成果は、2025年12月23日付けで国際科学誌Communications Chemistryにオンライン掲載されました。
図1. 本研究の戦略 一塩基ずれた非相補的かつ近接する位置にチオグアノシン(図中の配列内ではSと表示)を配置することで、光照射や化学酸化によりDNA鎖間をジスルフィド結合で架橋する。
【用語解説】
注1. チオグアノシン(TG)
DNAを構成する4つの塩基(A, T, G, C)の一つである「グアニン(G)」の酸素原子を、硫黄原子に置き換えた人工的な核酸分子です。通常のDNAには含まれませんが、光に反応しやすい性質を持っており、今回の技術の鍵となる物質です。
注2. 還元環境(かんげんかんきょう)
酸化された物質を元に戻す作用が強い環境のことです。私たちの細胞の中は、グルタチオンという物質が多く存在するため「還元環境」に保たれています。本技術では、この環境を利用して、架橋したDNAを細胞内で元の状態に戻すことができます。
注3. 薬物送達システム(DDS)
体内の薬物を、必要な場所へ、必要な量、必要なタイミングで送り届ける技術のことです。副作用を抑えつつ、薬の効果を最大限に高めるために重要です。
注4. DNAナノテクノロジー
DNAを遺伝情報の記録媒体としてではなく、ナノメートルサイズの微細な構造体を作るための「部品」として利用する技術分野です。
【論文情報】
タイトル:Chemical and photoinduced interstrand crosslinking of oligo DNA duplexes containing 2'-deoxythioguanosines
著者: Jamila Abbas Osman, Kazumitsu Onizuka*, Yuuhei Yamano, Fumi Nagatsugi*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 准教授 鬼塚 和光、 教授 永次 史
掲載誌:Communications Chemistry
DOI:10.1038/s42004-025-01853-z
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 鬼塚和光(おにづか かずみつ)
TEL:022-217-5634
Email: kazumitsu.onizuka.d7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学多元物質科学研究所
教授 永次 史(ながつぎ ふみ)
TEL:022-217-5633
Email: fumi.nagatsugi.b8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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