2026年 | プレスリリース?研究成果
中温域で10??S/cmを大きく超える酸化物超イオン伝導体a軸配向SDC電解質膜を開発 ~中温作動型固体酸化物燃料電池への応用に一歩前進~
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 助教 志賀大亮
多元物質科学研究所 教授 組頭広志
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- (100)配向イットリア安定化ジルコニア(YSZ)基板上に成膜したa軸配向Sm3+ドープCeO2(SDC)薄膜が、200 ~ 550℃の中温域で動作し、極めて高い酸化物イオン伝導率(σ > 10-2 S/cm)を示すことを明らかにしました。
- イオン輸率が96に達することが確認され、電子伝導がほとんど抑制された純粋な酸化物イオン伝導体であることが実証されました。
- 本研究をさらに発展させることにより、中温域で実用できる次世代の固体酸化物形燃料電池や全固体電気二重層トランジスタ用途の電解質材料の開発が期待されます。
【概要】
東京理科大学 先進工学部 物理工学科の樋口 透教授、同大学大学院 先進工学研究科 物理工学専攻の森實 亮太氏(2025年度 修士課程2年)、田淵 理久氏(2025年度 修士課程2年)、東北大学多元物質科学研究所の志賀 大亮助教、組頭 広志教授らの共同研究グループは、200 ~ 550℃の中温域で動作する固体酸化物燃料電池(SOFC)の新規電解質材料として、a軸配向 Sm3+ドープCeO2(Ce0.75Sm0.25O2-δ: SDC)薄膜を作製し、世界最高水準の酸化物イオン伝導度を実現しました。
現在実用化されているSOFCの多くは動作温度が高く、低コスト化やその用途拡大のために、中温域で優れた伝導度を示す固体電解質材料の開発が求められていました。そこで本研究グループは、SOFCの固体電解質材料として、RFマグネトロンスパッタリング法(*1)を用いて、(100)配向イットリア安定化ジルコニア(YSZ)単結晶基板上に、厚さ約20 nmのa軸配向SDC薄膜(SDC/YSZ)を作製し、酸素空孔率やイオン伝導度について評価しました。
各種分析の結果、SDC/YSZ薄膜は300℃で約0.05 kΩ cmという極めて低いバルク抵抗を示すことが明らかとなりました。また、中温域において10-2 S/cm超の高い酸化物イオン伝導率を示し、イオン輸率0.96(*2)を達成しました。この優れた性能は、(1)b-c面に形成された大量の酸素空孔(δ = 0.17)による効率的なイオン輸送、(2)約2.6 eVのエネルギーギャップによる電子伝導の抑制、(3)Ce 4f電子間の強いクーロン反発(*3)、という3つの要因に起因することも解明しました。これらの成果は、a軸配向SDC/YSZ薄膜が中温域で動作するSOFCおよび全固体電気二重層トランジスタ用の実用的な電解質材料として高いポテンシャルを持つことを示しています。
本研究成果は、2025年12月19日に国際学術誌「Journal of the Physical Society of Japan」にオンライン掲載されました。
図1 CeO2-δとCe0.75Sm0.25O1.83(SDC)の結晶構造
【用語解説】
*1 RFマグネトロンスパッタリング法
交流の高周波電源を利用して、基板上に非常に薄い膜を作製する手法。セラミックスなどの絶縁体の堆積にも適用できる。
*2 イオン輸率
材料中の全伝導率のうち、イオン伝導が占める割合。
*3 クーロン反発
同じ符号の電荷間(プラスとプラス、マイナスとマイナス)にはたらく斥力。本研究ではCeの4f電子間(マイナスとマイナス)にはたらく力について言及している。
【論文情報】
雑誌名:Journal of the Physical Society of Japan
論文タイトル:Oxide Superionic Conductivity of a-Axis-Oriented Ce0.75Sm0.25O2-δ Thin Film on Yttria-Stabilized Zirconia Substrate
著者:Ryota Morizane, Riku Tabuchi, Daisuke Shiga, Hiroshi Kumigashira and Tohru Higuchi
DOI:10.7566/JPSJ.95.014706
問い合わせ先
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)