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p型?n型制御に成功:窒化物熱電薄膜の実用化に前進―残留酸素を活用した欠陥設計でキャリア極性を制御―

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻 助教 双逸
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • スパッタリング1装置内の残留酸素を除去すべき不純物ではなく制御因子として活用し、意図的な元素添加を行うことなくクロム窒化物(CrN)薄膜のn型からp型への伝導型変換2を実現しました。
  • 酸素が結晶中の欠陥を制御する鍵として機能することを解明しました。
  • 単一材料かつ同一結晶構造を持つn型?p型CrN薄膜の作製に成功し、耐熱性に優れたn-pホモ接合3型薄膜熱電デバイスへの道を開きました。

【概要】

近年、集積化や小型化に適した薄膜熱電材料4への関心が高まっています。中でも、高温環境下で安定に動作する遷移金属窒化物は有望材料とされ、特にクロム窒化物(CrN)は優れたn型熱電特性を示すことが知られています。一方、実用的な薄膜熱電モジュールには、同一材料系でn型とp型の両立が不可欠ですが、従来手法ではプロセスの複雑さが課題となっていました。

東北大学大学院工学研究科の双逸助教と須藤祐司教授らの研究グループは、スパッタリング装置内の残留酸素を活用し、反応性窒素ガス流量を制御することで、CrN薄膜の伝導型をn型からp型へと変換できることを見出しました。低流量ではN空孔によりn型を示し、流量の増加によりCr空孔が安定化してp型へと変化します。放射光実験および第一原理計算により、酸素が欠陥形成を制御する因子として機能していることを明らかにしました。

本成果は、意図的な元素添加を行うことなく単一材料でn型?p型の両立を可能にする新たな材料制御指針を示し、耐熱性に優れた窒化物薄膜熱電デバイスの実現に向けた重要な一歩となるものです。

本研究の成果は、2026年3月6日に英国王立化学会誌Journal of Materials Chemistry Aに掲載されました。

図2. (a) 各fN2で成膜したCrN薄膜のゼーベック係数。(b) 代表例として、fN2 = 2 sccmで成膜したCrN薄膜のCr K吸収端におけるフーリエ変換EXAFSスペクトルおよびフィッティング結果。(c) (b)のフィッティングに基づき算出したCr-Cr経路の配位数(Coordination number)。

【用語解説】

注1. スパッタリング:スパッタリングは、真空中でターゲット材料を原子レベルで放出し、基板上に薄膜として堆積させる成膜技術である。反応性スパッタ法はスパッタリングの中の一種で、アルゴンなどの不活性ガスに加えて窒素などの反応性ガスを導入し、成膜中に化学反応を起こしながら薄膜を形成する方法である。

注2. n型からp型への伝導型変換:半導体における電気伝導の型。n型は電子が、p型は正孔(電子が抜けた状態)が主に電流を運ぶ。n型からp型への伝導型変換とは、主な電荷担体が電子から正孔へ変化すること。

注3. n-pホモ接合:同一材料内でn型とp型を形成した接合構造。物性が一致するため安定性に優れる。

注4. 熱電材料:温度差を電気エネルギーに直接変換できる材料。外部電源を用いずに発電できるため、廃熱の有効利用技術として注目されている。

【論文情報】

タイトル:Residual oxygen-driven p-n conversion and thermoelectric properties in CrN films
著者:Yi Shuang*, Yuta Saito, Shogo Hatayama, Mihyeon Kim, Fons Paul and Yuji Sutou*
*責任著者:
*1東北大学大学院工学研究科 助教 双 逸
*2東北大学大学院工学研究科 教授 須藤 祐司
掲載誌:Journal of Materials Chemistry A
DOI:10.1039/D5TA10269C

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 助教 双 逸
TEL: 022-795-7339
Email: shuang.yi.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院工学研究科 教授 須藤 祐司
TEL: 022-795-7338
Email: ysutou*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室 担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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