2026年 | プレスリリース?研究成果
水あめの浸透圧を利用した新たな創傷被覆材がキズを治りやすくするメカニズムを解明-「治す力を高める」創傷被覆材でキズに苦しむ患者を救う!-
【本学研究者情報】
〇東北大学大学院医学系研究科
看護技術開発学分野
教授 菅野 恵美
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 水あめによる浸透圧(注1)を利用した新しい創傷被覆材(以下、本創傷被覆材)(注2)に治癒効果があるメカニズムを、マウスを用いて解明しました。
- キズの治りを早めるカギは、本創傷被覆材の増殖因子(注3)等の「治りに必要な成分を逃さない」作用であることを明らかにしました。
- 本創傷被覆材が持つ機能を活用した「患者の治す力を高める(免疫細胞を活性化する(注4))」創傷ケアは、難治性創傷(治りにくいキズ)(注5)に苦しむ患者を救う新たな解決策となることが期待されます。
【概要】
日本では100万人/日以上の患者が医療機関で創傷(皮膚のキズ)に悩み、治療を受けています。さらに高齢化に伴い、褥瘡(注6)など難治性創傷が増加しており、国内で400万人以上の難治性創傷患者が、長期間の治療に苦しんでいます。このような治りにくいキズの治療には、患者自身の「キズを治す力」を無駄なく活用した創傷ケアが重要と考えられています。
東北大学大学院医学系研究科看護技術開発学分野の佐藤佑樹助手、伊藤永貴大学院生、菅野恵美教授、東京薬科大学薬学部免疫学教室の安達禎之教授らの研究グループは、キズ口からの滲出液のうち余分な水分だけを水あめの浸透圧を利用して吸収し、キズの治りを促進する成分は創部に留める機能を持つ創傷被覆材の創傷治癒への影響を検討しました。その結果、本創傷被覆材の「治りに必要な成分を逃さない」という特徴が、免疫細胞を活性化させ、キズの治りを早めることを明らかにしました。この研究成果により、本創傷被覆材がキズに悩む患者の課題解決のカギとなることが期待されます。
本研究は、2026年3月6日付けで科学誌Scientific Reportsに掲載されました。
図1. 新しい創傷被覆材の構造と特徴
本創傷被覆材は、水あめの吸収力と、半透膜の水や小さな分子のみを透過させる特性により、サイトカインや増殖因子といったキズの治りに必要な成分を創部に留める構造となっています。吸収された水分はパッド外へ蒸散されるため、多量の滲出液にも対応可能です。さらに、高い透明性を有することから、貼付したまま創部の状態を観察できるという利点も備えています。
【用語解説】
注1. 浸透圧
水が濃度の低い方から高い方(この場合は水あめ)へ移動しようとする力のこと。この作用を利用することで、余分な水分を吸収できます。
注2. 創傷被覆材
キズを覆って保護する医療用材料。乾燥や感染から守り、治りやすい環境を整える目的で使用されます。本研究では、2024年にオカモト株式会社が開発した創傷治癒を促進する新しい創傷被覆材「ATK?パッド」を使用しました。
注3. 増殖因子
細胞の増殖や修復を促すタンパク質。創傷治癒を進める重要な働きを担います。
注4. 免疫細胞を活性化
体を守る細胞(例:好中球やマクロファージ)の働きを高めること。創傷治癒では、細菌の排除や治癒過程の開始に不可欠なプロセスです。
注5. 難治性創
通常よりも治りにくく、長期間治癒しないキズ。糖尿病性潰瘍や重度熱傷などが含まれます。
注6. 褥瘡
長時間同じ姿勢を続けることで皮膚や組織が圧迫されて生じるキズ。一般に「床ずれ」と呼ばれます。
【論文情報】
タイトル:A transparent osmotic wound dressing ATKPAD promotes the healing process and regulates hypoxia-dependent inflammatory responses
著者:Yuki Sato*, Eiki Ito, Hiromasa Tanno, Takashi Kanno, Ryuto Arai, Koji Sato, Ayato Kaneta, Wakana Kamada, Ikue Sone, Ko Sato, Shinyo Ishi, Toshiro Imai, Hiromu Matsunaga, Tetsuji Aoyagi, Yoshimichi Imai, Yoshiyuki Adachi, Emi Kanno
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科 看護技術開発学分野 助手 佐藤 佑樹(さとう ゆうき)
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-026-41264-1
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
看護技術開発学分野
教授 菅野 恵美(かんの えみ)
TEL: 022-717-7484
Email: emi.kanno.d2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科?医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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