平成20年9月東北大学学位記授与式 総長告辞
本日ここに、東北大学関係各位のご列席のもと、平成20年9月、東北大学、学位記授与式を挙行することになりました。
本日、学士の学位を授与された者は、文学部、4名、法学部、5名、経済学部、9名、理学部、3名、工学部、13名、あわせて34名であります。
修士の学位を授与された者は、文学研究科、2名、教育学研究科、1名、法学研究科、1名、経済学研究科、6名、理学研究科、8名、医学系研究科、1名、薬学研究科、1名、工学研究科、20名、農学研究科、1名、国際文化研究科、2名、情報科学研究科、4名、生命科学研究科、1名、環境科学研究科、3名、医工学研究科、1名、合わせて、52名であります。
さらに、専門職大学院学位授与者は、会計大学院、6名、であります。
博士の学位を授与された者は、課程を修了した者、文学研究科、7名、教育学研究科、1名、法学研究科、2名、理学研究科、6名、医学系研究科、17名、歯学研究科、1名、薬学研究科、2名、工学研究科、52名、農学研究科、4名、国際文化研究科、3名、情報科学研究科、7名、生命科学研究科、5名、環境科学研究科、4名、医工学研究科、1名、合わせて、112名であります。
博士論文を提出し、博士の学位を授与された者は、文学研究科、2名、経済学研究科、1名、理学研究科、1名、医学系研究科、5名、薬学研究科、4名、工学研究科、1名、農学研究科、4名、国際文化研究科、1名、情報科学研究科、1名、合わせて、20名であります。
本日の学位記授与者は224名でありますが、その中には、10月に入学した者、82名、学業成績が優秀により、早期卒業制度適用者、6名、修士、博士、在学期間短縮適用者、19名の諸君らもおります。さらに、長年にわたる大変な努力により論文を書き上げ、博士の学位を授与された方々もおります。
長い間の研鑽が実を結び、本日ここに学位を授与された諸君に対し、心から敬意を表しお祝いを申し上げます。また、同時に、諸君を何年にもわたり、暖かく見守り、支えてこられました、ご家族をはじめ、本日ここにご出席いただきました皆様にも、心からお祝いを申し上げます。
御存知のように、東北大学は、昨年、創立百周年という歴史的節目を迎えました。 明治40年、1907年に、わが国の第三番目の帝国大学として設立されて以来、本学は、帝国大学の中で他にさきがけて高等専門学校、 高等師範学校の卒業生にも就学の道を開き、さらに、大正2年(1913年)には日本の国立大学として始めて、 女子学生の入学を認めるなど「門戸開放」が本学の不動の理念でありました。また、創立にあたっては、 世界の先進大学で研鑽を積んだ若き俊秀が教授として集まり、研究と教育は離れては存在できないものと位置づけ、 優れた研究に裏打ちされた教育を目指す大学として、「研究第一主義」の精神を確立しました。また、戦前からいち早く 大学発のベンチャー企業を創設して地域産業の育成を図るなど、多くの先端的な研究成果を世界に発信し、 日本だけではなく世界の発展に大きく貢献する、「実学尊重」の伝統も育んでまいりました。このような精神は、第二次世界大戦、 戦後の成長期を経て、グローバル化が進行する現代にも生き生きと息づいております。
そして、これまでの百年間の歴史の中で脈々と受け継がれてきた「門戸開放」「研究第一主義」「実学尊重」の精神のもと、東北大学は、次なる百年の礎を築く第一歩として、人類社会の様々な課題に挑戦する「世界リーディング?ユニバーシティ」になるという目標を掲げました。
人類社会の発展に貢献していく「世界リーディング?ユニバーシティ」になるという目標は、一朝一夕に実現できるものではありません。また、大学を取り巻く競争環境が絶えず激しく変化することも忘れてはなりません。しかし、これからの進むべき道程を明確にし、東北大学の素晴らしい教職員、学生、そして同窓生が相互に切磋琢磨をしてその力を発揮することで、この目標を達成することができると信じています。
そうした東北大学を巣立ち、社会に踏み出そうとしている諸君に、私は次の三つのことを強く期待したい。
第一は、実行力をもって挑戦を続けて欲しいということです。
高度な専門的能力を身につけられた諸君は、グローバルな事象で揺れ動く国際社会における実践の場において、より広くて深い知識、より高い俯瞰力、そしてよりスピードある行動が求められることでしょう。
第二は、好きで、楽しんで挑戦を続けて欲しいということです。
挑戦を続けていくには大きなエネルギーが必要になります。そのエネルギーは、自分が燃え上がることで心の底から沸き上がってくるものです。自分が燃え上がるための最良の方法は、挑戦することを好きになることです。どんな挑戦であっても、夢中になって打ち込んでいくと、「そういうことだったのか」という至福の瞬間が訪れ、新しい世界が開けていきます。私も、長年取り組んでいた研究課題に対して、共通する基本的考え、この場合には経験則でしたが、その存在が浮かんだ時には、嬉しさのあまり幾度も「分かった」と呟き、急に世界が明るくなり、人生に対して自信が沸いてくるのを感じた体験があります。
第三は、何よりも諸君一人ひとりが独立する精神を持って挑戦を続けて欲しいということです。
「独立する精神」とは、自分で自分の心を支配し、自分の信念に忠実に行動することです。より正確に言えば、他人に依存せず、自分で物事を見極め、自分の責任で行動することを指します。
人は誰しも、成長して自立していかなければなりません。その途上では、辛いこと、苦しいことは必ずあります。しかし、自分の選んだ道を信じ、前向きに楽しんで挑戦を続け、ゴールへたどりつくまで一ミリずつでも進んでゆく。そんな思いが明日への扉を開けていくものと信じます。その時は道なき道の足跡でも、きっと確かな道となっていくことでしょう。
第一は、実行力をもって挑戦を続けること。
第二は、好きで、楽しんで挑戦を続けること。
第三は、自分自身が独立する精神を持って挑戦を続けること。
実はこうした人間像こそが、私が長年理想とした研究者像でもありますし、決して研究者像のみならず、前向きに人生を生き抜こうとするすべての人に共通するものであると思っています。
これが今日ここに学位記授与式を迎えた諸君に対する、私からのお祝いのメッセージです。
最後に、私たち東北大学は、教職員、学生、同窓生はもとより、広く社会の方々との関わりの中で活動を行っています。「世界リーディング?ユニバーシティ」を目指して、人類社会の様々な課題に挑戦していくことにより、社会から信頼、尊敬、そして愛情を受けられる大学として、人類社会の発展に貢献できるものと私は信じております。また同時に、東北大学は、諸君のこれからの人生にとっていつまでも有意義な存在であり続けたいと思っています。
ここに一堂に集われた諸君一人ひとりが学問に対し、そして東北大学に対しいつまでも変わらぬ愛をもち、それぞれの夢に向かって飛躍されることを願ってやみません。諸君が不断の努力を惜しむことなく、未来を見つめ、挑戦し続け、新たな世界の扉を開かられることを心から祈念して、私の式辞の結びといたします。
平成20年9月25日 東北大学総長 井上 明久
(於: 2008.9.25 仙台国際センター)