平成26年 東北大学総長 年頭所感
皆様、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
昨年は東北楽天の優勝?日本一に沸いた一年でした。また、本学においても七大学総合体育大会に優勝するなど明るいニュースがありました。今年もよき一年になることを願っております。
早いもので東日本大震災から3年が過ぎようとしています。仙台市内に限って言えば震災の爪痕はほとんど感じられなくなり、復旧?復興の過程は順調に進んでいるといえます。学内もまだ少しざわついた感は残っていますが、教育?研究機能はほぼ元に戻っております。現在建築中の殆どの建物は26年度中には竣工予定ですので、それらの建物を活用することで、今年は教育?研究機能が一段と強化されるものと期待しております。しかしながら、津波の被害が甚大であった沿岸部はこれからが復興本番で、これらの地域の復旧?復興に本学がどのように寄与していくのかが問われております。世の中の変化の速さを考えたとき、まだ3年しか経っていないからという甘えは許されません。むしろもう3年も経ったのだから目に見える形での成果を出してほしい、との声が上がることを覚悟して臨まなければなりません。東北大学災害復興新生研究機構に掲げた8大プロジェクト研究やアクションプランを推進し、本学から発信された成果が我が国を元気づける原動力になるよう頑張りましょう。
総長就任時に目標に掲げた「東北の復興?日本新生の先導」と「ワールドクラスへの飛躍」の2つの目標を具体化する方策として、昨年8月に里見ビジョンを策定しました。これは、東北大学を「人が集い、学び、創造する、世界に開かれた知の共同体」としてとらえ、学生?教員?職員など一人ひとりの能力を存分に発揮できる環境を整えたいという、私自身の思いを基本にしています。7つのビジョンに具体的に提示された内容を、毎年確実に達成していくことで、小さな変化が5年後には大きな進歩になるようにしていきたいと考えております。
今年は懸案であった教育?研究面での改革を実行する年になります。教育面では、今後ますます進行する国際化を見据えて、世界を舞台に活躍し社会にイノベーションをもたらす人材を育成するため、基盤となる教養教育の充実を図ります。これまで一年余の時間をかけて検討を重ねてきましたが、既存の高等教育開発推進センターと幾つかの組織を統合して高度教養教育?学生支援機構を設置することが決まりました。これは教養部を改組した時以来の大改革になります。教育を専門にする教員を大幅に増員することで、語学をはじめとするコミュニケーション力の向上、自ら問題を設定し解決する能力や総合的に考える力を養うなど、これまで日本の大学でうまく伸ばすことができなかったと言われてきたことを、上手に育てられる体制に再編します。全学の先生方には教育面での貢献をさらにお願いすることになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。また、キャンパスの国際化のためには海外からの学生を受け入れると同時に、多くの日本人学生を海外へ送り出すことが必要です。特に若い学部学生のうちに海外に出かけることが大切だと思っております。内向きで海外に出かける学生が減ってきているといわれていますが、昨年までの経験からは、きっかけさえ与えれば積極的に出かけていく学生が多いことがわかりました。支援制度を充実することで海外へ雄飛する機運を盛り上げていきたいと思います。海外から多くの学生を招き入れるためには、本学が魅力ある教育を提示できるかが大きなカギとなります。今年は海外の大学とのダブルディグリー、ジョイントディグリー制度を積極的に展開していきます。
研究面では、昨年は学際科学フロンティア研究所を設置し、若手の研究者を大学全体で育成する組織にしました。今年は育成する若手の数を増やすとともに、海外へ派遣する制度の充実を図る予定です。また、世界の一流の研究者を招へいし、本学に1~3か月滞在してもらう、知のフォーラム事業を促進します。滞在中は本学の研究者のみならず日本全国の学生諸君にも開放し、最先端の研究者との有意義なディスカッションの場を提供します。異なる分野の研究者が自由に討議することで、知のフォーラムを介して新しい学問分野が生まれることを期待しています。また、人事制度を柔軟にして人的交流を活発にする仕組みも必要になります。年俸制やダブルアポイントメント制度を導入し、海外からの研究者を招きやすく、また本学の教員が他の機関と自由に行き来できるようにしたいと考えています。
「東北の復興?日本新生の先導」の目標に向かっては、災害科学国際研究所の活動を強化すること、東北メディカル?メガバンク機構で進めている遺伝子情報の集積と医療情報を組み合わせた21世紀型の地域医療の創設、ビッグデータによってもたらされる新規の医療産業の基盤形成、また、情報通信研究機構(NICT)との共同研究による災害に強い情報通信の整備、再生可能なエネルギーを生み出す新たな技術革新、放射性物質の効果的な除去法や原子炉の廃炉に向けた研究、三陸の豊かな海を取り戻すためのマリンサイエンス研究など、東北大学災害復興新生研究機構のもとに掲げてきた広範な課題を一つ一つ丁寧に解決していくとともに、今年新たにスタートするCOIストリームや出資事業などでも成果を挙げていかねばなりません。特にCOIストリームは採択された全課題の中で一番大きな研究費を獲得していますので、注目されると同時に責任も大きいと言えます。
今年は本学が昨年の東北楽天の活躍に代わって、研究の力と人材の育成によって、東北に希望を与える年にしたいと考えます。
干支にちなんで、皆さんが一騎当千の強者として躍動し、千里の馬のごとくスピード感あふれる実行力で課題を解決されることを期待しております。
平成26年1月6日 東北大学総長 里 見 進