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里見進総長

皆様明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

今年の干支は未(羊)です。羊年は羊の持つ優しい性格から平和と安泰の年と言われています。また一方で、未は木々の枝が十分には伸びきっていない状態を表すとされ、未熟や未完のように何事かが十分に出来ていない意味で使われます。このことから未年は物事がうまくいかない年のように思われがちですが、木々の枝には、時が経つと葉を茂らせ、花を咲かせ、やがて大きな実りをもたらす未知の力があることから、まだ形になっていないものが形になる、つまり物事が大きく進展する可能性を秘めた年ともいわれています。
 今年は本学の持っている未来の可能性や潜在力を形にすることで、後の時代から振り返った時に、東北大学が大きく発展する契機の年であったといわれるようにしたいものです。

今年は阪神?淡路大震災から20年、3月には東日本大震災から満4年、また、4月からは私の総長としての任期6年の後半戦に入ることになります。これまでの2年10か月を振り返ってみますと、震災で損なわれた教育?研究機能や環境は整備され、震災前と比べても遜色のないレベルにまで復興しました。特に、建物や設備の復興は順調で、昨年末までに工学系の三専攻の建物をはじめとして、多くの教育?研究施設が竣工しました。今年も理学研究科や電気通信研究所、大学病院の新中央診療棟を含め多くの施設が完成する予定で、この一連の建築ラッシュは、平成28年度中に見込まれている農学研究科の移転まで続きます。12月に予定されている地下鉄の開業と合わせて、東北大学のキャンパス環境は大きく変化します。

私が総長就任時に掲げた「東北の復興?日本新生の先導」と「ワールドクラスへの飛躍」は、まだ十分に達成出来ていません。
 震災直後の混乱の中で設置された東北大学災害復興新生研究機構のもとで実施されている8大プロジェクトは、災害科学国際研究所や東北メディカル?メガバンク機構、耐災害ICT研究センター、複合生態フィールド教育研究センター(女川)など拠点となる建物が完成し、研究成果も徐々に形を成してきました。3月に仙台で開催される国連防災世界会議では、災害科学国際研究所をはじめとして多くの本学関係者が参画し、研究成果を発表することになっています。また、東北メディカル?メガバンク機構は岩手医科大学との共同作業で、昨年までに6万人を超える遺伝子情報を集積しました。そして標準的な日本人1,000人の全ゲノム解析を基にして、日本人に適した遺伝子解析が可能となるジャポニカアレイを世に送り出すことができました。費用も従来のものに比して20分の1程度に抑えられていますから、近い将来、気軽に遺伝子情報を検索し、その結果をもとにして、究極の個別化予防や個別化医療を実施する時代が到来すると思われます。そのほか、耐災害ICT研究センターでは災害に強い情報通信網を整備するための実証実験が行われていますし、三陸の豊かな海を取り戻すためのマリンサイエンスや再生可能なエネルギーを用いることで持続可能な社会を作る試み、放射性物質の簡便な測定法や効果的な除染法、地域に雇用を生み出す企業家の養成、東北発素材技術先導プロジェクトや医療機器産業クラスター形成プロジェクトなど、研究成果を産業に活かす、産学官連携の試みなどが進行しています。これらに加えて、福島第一原発の廃炉に向けた研究やそのための人材育成、さらには震災直後に提案された100を超えるアクションプランが、様々な部局で実施されています。今年はこれらの研究成果を、見える形で世の中に提示していく年にしなければなりません。

「ワールドクラスへの飛躍」に関してもより一層の努力が求められています。教育面では昨年4月に発足した高度教養教育?学生支援機構を充実させ、GPA制度や科目ナンバリング制度等の整備を行う必要があります。また、グローバルリーダー育成プログラムを推進し、日本の若者を世界に送り出すとともに、海外から多くの若者を受け入れる体制を整備していきます。その一環として、海外の著名な大学と共同で学生を教育する国際共同大学院プログラムがスタートします。これは文部科学省で公募したスーパーグローバル大学創成支援(SGU)事業として実施されるもので、この4月にスピントロニクス分野でスタートします。5年以内には本学の強みとする分野や、人類にとって将来大きな課題となる分野など、7分野の共同大学院を設置することになっています。7分野以外でも国際共同大学院を設置したいと希望している分野があります。国際共同大学院の数を20程度まで増やすことができれば、我々の目標とする世界30傑大学の一員になれると考えています。
 研究面では、国際高等研究教育院で行ってきた大学院生への支援、学際科学フロンティア研究所で行ってきた若手研究者支援を拡充していきたいと思います。また、今年は知のフォーラム事業のもとで滞在型の交流を実現し、学生や若手の研究者と世界の著名な研究者との交流を推進します。また、昨年7月に設置した高等研究機構を実質化して、WPI-AIMR型の研究組織を幾つか設置していく予定です。そのためには人事制度や評価の在り方を整備する必要があります。

文部科学省が評価指標として取り上げる世界大学ランキング(THE)では残念ながら、このところ毎年順位が落ちています。あまり細かい順位にこだわる必要はないとは思いますが、評価が上がるように対策を立てることは必要です。しっかりとした分析をもとにして、教育研究面での施策を確実に実施することで、堅実に評価を高めていき、結果として世界から尊敬される大学になることを目指して行きたいと思います。

学生諸君は震災後も常に元気で、現在、全国七大学総合体育大会(七大戦)2連覇中です。今年は本学が主管校になっております。本学は主管校破りをされたことのない唯一の大学です。今年もその栄誉を守り、10月には勝利の美酒を皆さんと一緒に味わえることを楽しみにしています。

平成27年1月5日

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東北大学総長

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