平成31年 東北大学総長 年頭所感
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
昨年4月に総長を拝命しました。わが国を代表する総合研究大学である東北大学をさらに発展させ、本学に寄せられる期待に応えるために、力を尽くして参ります。
さて、わが国では「平成」が間もなく終わり、新しい元号の時を迎えようとしています。この中で世界は、グローバリゼーションやデジタルトランスフォーメーションの急速な進展、地球環境や人口動態、地政学的構造の変移など、まさに急激な変化の只中にあります。東北大学は、これまでも社会の変革、イノベーションを力強くけん引してきた歴史ある総合研究大学です。その卓越した知と人材の力をもって、これからの未来社会をデザインし、その実現を先導することが求められています。
このような社会的要請に応えるため、昨年11月には「東北大学ビジョン2030」を取りまとめ、「最先端の創造、大変革への挑戦」というタイトルのもと、本学の中長期的な目標とコミットメントを提示しました。本学の3つの伝統的な理念、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」を基盤として大学経営の革新を図ることにより、「教育」、「研究」、「社会との共創」の好循環をより高い次元で達成し、知識基盤社会の担い手としての推進力を飛躍的に高めて参ります。
まず「教育」の主眼は、大変革時代の社会を先導するリーダーの育成です。東北大学で学ぶ諸君の挑戦心に応え、創造力を伸ばす教育を展開します。変革の時代を迎え、学ぶことの意味がこれまでとは大きく変わりました。生涯を通じて学び、探求し続ける力を身につけることが、これからのリーダーにとって最も大切です。主体的な学びの土台となる学士教育、研究大学だからこそ可能となる大学院教育をベースとして、学生諸君が日々新たなチャレンジを通して自然にグローバルリーダーとしての素養を身につけていく、そのような学びの場を形成します。
「研究」では、深い理解に基づいた知の創造、新たな学問領域の開拓、イノベーション創出を掲げています。「研究第一」を標榜する大学として、戦略的に研究を進めるシステムを構築すると共に、将来の研究を担う若手研究者を世界から集め、存分に活躍できる場を創造します。これらの結果として、わが国を代表する総合研究大学にふさわしい研究力を確立し、国際的なプレゼンスを高めます。さらに、2023年に青葉山新キャンパスにおいて稼働予定の次世代放射光施設を戦略的に活用し、世界最先端の学術の開拓、わが国の産業競争力に資する産学連携の展開、そして地域の振興に大きく貢献します。
「社会との共創」には、産業界との連携、ならびに、社会の多様なセクターとの連携の二つの側面があります。前者は、私たちの研究成果を社会に供するのみにとどまらず、産業界のパートナーと密接に協働し、より大きな社会価値を創造することを目指します。当然ながら、次世代アントレプレナー(起業家)の育成も大きな柱となります。後者は、東日本大震災を経験した総合研究大学として私たちの心に刻まれた「社会と共にある大学」の諸活動を実践するものです。各種の震災復興プロジェクトはもとより、国連のSDGs(持続可能な開発目標)に資する「社会にインパクトある研究」プロジェクト群を推進し、課題先進地域ならではの大胆な挑戦を通して明るい未来を紡ぎ出します。
最後に、これまで述べてきた「教育」、「研究」、「社会との共創」の間の好循環を基盤として、より大きな社会価値を持続的に生み出すために大学経営を革新します。海外の有力大学が大きな投資を受けて発展する中で世界と伍していくことを目的として、経営資源の多様化を図り、指定国立大学法人にふさわしい新たな大学の姿を目指します。
「最先端の創造、大変革への挑戦」は、東北大学の挑戦であると同時に、学生諸君、教員、職員、一人一人の挑戦でもあります。多彩な能力をもった構成員が生き生きと活躍するキャンパスを創造し、本学に対する期待に応えて参ります。
新しい年が皆さまにとってすばらしい年となることを祈念し、新年のご挨拶といたします。
平成31年1月4日
東北大学総長